2026年10月16日(金)
10月2日からスタートしたB君の自転車技術講習も、今回で5回目を迎えました。
初日は工具の使い方から始まり、回を重ねるごとに解体スピードが向上。今では必要な工具を自分で選び、作業の順序を考えながら取り組めるようになってきました。
そして今回は、これまでの講習から一歩踏み出す大きな出来事がありました。
B君が人生で初めて、自転車の部品交換に挑戦したのです!

これまでは「バラすこと」が中心でしたが、いよいよ「取り付けること」「整備すること」へ。
そんな成長の様子をご紹介します。
■ 13:15〜14:10 錆びついたニップルとの格闘!
まずは前回の講習で解体した車輪の続きからスタートしました。

今回の作業は、前後車輪のスポークとニップルの取り外しです。
ところが、思わぬ難敵が待っていました。
ニップルが錆びついていて、なかなか緩まない!
ニップルとは、スポークとリムをつなぎ、スポークの張り具合を調整する小さな部品です。
長年使用された自転車では、雨水や湿気の影響でニップルとスポークが固着してしまうことがあります。
こうなると、通常の解体よりも時間がかかります。
無理に回そうとすると、工具が滑ったり、スポークがねじれたりすることもあります。
B君も苦戦していましたが、諦めずに作業を続け、無事に前後両方の車輪を解体することができました。
こうした思いどおりに進まない経験も、技術を身につけるうえでは大切な勉強です。
そして、取り外したタイヤやチューブについても少し説明しました。
まだ再利用できるものなのか。
劣化や損傷によって再利用できないものなのか。
今回は私がその場で判断し、分別しましたが、いずれはB君自身が見極められるようになってほしいと考えています。
自転車を再生するうえで、部品の良し悪しを判断する目は欠かせません。
ただ外すだけではなく、外した部品の価値を判断できる技術者へ。
これも今後の大切な学習テーマです。
■ 14:25〜15:30 初めての外装6段変速車に挑戦!
休憩後は、これまでとは少し違う車両の解体に挑戦しました。

今回の教材は、外装6段変速のシティサイクルです。
これまでは単速車を中心に解体してきましたが、今回は変速機付きの車両。

とはいえ、6段変速のフリーホイールやディレーラーなどを除けば、基本的な構造はこれまで学んできた自転車と大きく変わりません。
まずはいつものように、B君自身に必要な工具を工具箱から選んでもらいました。

何度も繰り返してきたことで、工具の選択や作業の流れも少しずつ身についてきています。

作業途中、錆びたチェーンの取り外しで手が止まりました。
そこで今回は、新たにチェーンカッターの使い方をレクチャー。
チェーンカッターとは、チェーンの連結ピンを押し出して、チェーンを切り離すための専用工具です。
これも今後、修理や再生を行う際には欠かせない技術の一つです。
そして、今回初めて触れるディレーラー。
ディレーラーとは、チェーンを左右に移動させ、後輪のギヤを切り替える変速装置です。
初めての部品に戸惑うかと思いましたが、B君は臆することなく果敢に工具を当てていきます。
この姿勢が素晴らしい!

分からないから触らないのではなく、構造を観察しながら挑戦してみる。
そんな探究心が、技術の習得を後押ししているのだと思います。
そして、ボトムブラケット(B/B)の取り外しまで完了。
なんと65分で解体できるようになりました!
初日の頃と比べると、工具の扱い方も作業スピードも大きく成長しています。
もちろん、車種や解体範囲によって時間は変わりますが、確かな手応えを感じています。
■ 15:30〜16:00 ついに人生初の整備作業へ!
さて、ここからが今回の講習で最も大きな挑戦です。
これまでB君には、自転車の解体を中心に学んでもらってきました。
しかし、今回は一つステージを上げたミッションをお願いしました。
「今取り外したカゴステーとフェンダーステーを、別の車両へ移し替えてみよう!」
カゴステーとは、前カゴなどを支える金具。

フェンダーステーとは、泥よけを支える金具のことです。
これまでは取り外すだけだった部品を、今度は別の自転車へ取り付ける。
つまり、初めての部品交換作業です。
解体と整備は、似ているようで大きく違います。

解体は部品を外していく作業ですが、整備では正しい位置に取り付け、適切に固定し、安全に使用できる状態にしなければなりません。
そのため、今回は作業前に注意点を説明し、B君自身に取り付けを任せました。
整備作業ですので、必要な場面では私も少し口を挟みましたが、基本的には本人の手で進めてもらいました。
そして無事に作業完了!

B君、人生初の部品交換に成功です!
これは本当に嬉しい瞬間でした。
まだ小さな作業かもしれません。
しかし、今まで解体しか経験していなかったB君にとっては、大きな一歩です。
自転車をバラすことができる。
そして、外した部品を別の自転車に取り付けることができる。
この経験が、将来の自転車再生や修理技術につながっていきます。
■ チェーンにもサイズがある!実物を並べて学ぶ
今回の講習では、ホワイトボードを使ってチェーンのサイズについても説明しました。
自転車のチェーンは、どれも同じように見えるかもしれません。

しかし、実際には使用する変速機構によって幅が異なります。
一般的な単速車に使われるチェーンと、外装6段変速に使われるチェーンでは、横幅に違いがあります。
今回は実物を並べて、その違いを目で確認してもらいました。
今後、チェーン交換を行うようになったとき、誤ったサイズを選んでしまうと、変速不良や駆動系の不具合につながることがあります。
だからこそ、今のうちから違いを知っておくことが大切です。
実物を見て、触って、比較する。
こうした経験は、教科書の文字だけで覚えるよりも印象に残るものです。
将来、B君がチェーンのサイズを間違えそうになったとき、今回の講習を思い出してくれることでしょう。
■ 16:10〜17:15 思い出の自転車を解体!
本日最後の教材は、27インチのシティサイクルです。
実はこの自転車、私にとって少し特別な車両でした。
私の息子が高校生の頃、通学で使っていた自転車なのです!

そんな思い出のある車両を、今回はB君の技術講習に使うことにしました。
私の意気込みも、いつも以上です(笑)。
B君もここまで何台もの自転車を解体してきましたので、作業の勝手がだいぶ分かってきています。
「今のB君なら、1時間ほどで解体できるのではないか?」
そんな期待を持ちながら作業を見守りました。
ところが、今回の車両には「クルピタ」が付いていました。
クルピタとは、ハンドルを一定の位置で固定できる機構です。
通常の自転車とは構造が異なるため、ここでB君の手が止まってしまいました。
そこで、ロックナットに32mmのスパナを掛け、フロントフォークを回す方法をレクチャー。
新しい構造に少し苦戦しながらも、無事に解体を終えることができました。

今回も、また一つ新しい経験が増えましたね!
■ 解体の繰り返しに、新しい技術を少しずつ加える
第5回の講習を終えて、改めて感じたことがあります。
それは、慣れた作業の中に新しい課題を少しずつ加えることで、無理なく技術の幅を広げられるということです。
これまで何度も繰り返してきた自転車の解体。
その中に、今回は新しい作業をいくつも取り入れました。
錆びついたニップルへの対応。
外装6段変速車の解体。
チェーンカッターの使用。
チェーンサイズの違いの理解。
そして、人生初の部品交換。
最後にはクルピタ付き車両の解体にも挑戦しました。
こうして振り返ると、今回も盛りだくさんの講習内容でした。
しかし、これらは決してバラバラの知識ではありません。
すべてが将来の自転車整備や再生につながっています。
何度も同じ作業を繰り返して基礎を固める。
そのうえで、新しい構造や技術に少しずつ挑戦する。
この積み重ねによって、確かな技術が育っていくのだと思います。
■ 「バラせる」から「直せる」へ。技術者への第一歩
私たち一般社団法人 自転車技術者協会が目指しているのは、単に自転車を分解できる人を育てることではありません。
自転車の構造を理解し、適切な工具を選び、部品の状態を判断する。
そして、まだ使える部品を活かしながら、安全に自転車を再生できる技術者を育てることです。
B君が初日に語ってくれた、国内での中古自転車販売やパーツセンター構想。
その夢を実現するためには、まだまだ多くの技術が必要になります。
しかし、今回の部品交換は、その夢に向けた大きな第一歩だったと思います。
「バラせる」から「直せる」へ。
そして将来は、
「直せる」から「価値を生み出せる」へ。
技術を身につけることで、廃棄されるはずだった自転車に新しい命を吹き込み、使える部品を再び市場へ送り出す。
そんな循環を事業として成立させられる人材が増えていくことを願っています。
何より、B君が毎回新しいことに挑戦し、少しずつできることを増やしていく姿を見るのが、私自身の大きな楽しみになっています。
人が育てば、技術が残る。
技術が残れば、資源が活きる。
資源が活きれば、新しい仕事が生まれる。
B君、第5回の技術講習もお疲れさまでした!
次回も一緒に、新しい技術に挑戦していきましょう!
⸻
一般社団法人 自転車技術者協会
代表理事 中根和宏
人・技術・資源・想いを循環させ、笑顔と挑戦を未来へつなぐ。
