50数年の歴史の終焉

この度、歴史あるお店のお片付けのご依頼をいただきました。

サラリーマン時代。度々立ち寄って色々話をさせていただくもなかなか買っていただけなかったのですが技術的にリスペクトするお店でした。

2025年5月に社長がお亡くなりになったというご家族からの連絡でお母様がご近所へ引っ越すにあたり店舗を一掃したいとの事。

謹んでお片付けを受けさせていただきました。

50年前、名古屋に出て来られて自転車店を始められたそうです。

当時は石油ショックの後で問屋さんなどのお取引が大変な時代。

つい先日まで中古自転車と修理で営業されていた事もあり外した部品を再利用したりしていた事で問屋さんとの取引がままならなくても技術だけで仕事になっていけたのでしょうね。

いろいろなお店のお片付けをして来ましたがそれらのお店の数倍の物量が整理整頓されてギッシリと保管されていました。

流石に私一人では遂行が難しく県外の仲間に協力いただき再利用できる部品などを使っていただく手配が出来ました。

通常ならば廃棄してしまえば早いのですが職人さんが厳選して残した物だからこそ他の職人さんに見せれば利用出来ると判断していただけました。

工具などは毎月通って技術指導してる会社に進呈。

捨てるのは簡単だけどこれだけの工具を揃えるのには大きなお金が掛かるからです。

毎日夜の作業と分別でしたがそれらの部品や工具を整理していく事で社長と深く語り合いが出来ました。

思い入れのある物たちを広島、兵庫、大阪、滋賀、三重、神奈川へ分散しその先で活用されて故人の想いの引き継ぎが出来たと思っております。

最後のお片付けが終わり声が響き渡る店内を観て貴重な体験に感謝し終了した旨をお仏壇に報告させていただきました。

お片付けの業者に依頼すれば店内の荷物は全て産廃扱いで短期間で片付いたと思います。

それも一つの終焉。

特殊な細かいネジなどで困ったことがあるからそれらを分別して蓄積されていた徹底ぶりは本当に驚きでした。

弊協会は次に繋げるお手伝いという事で時間はかかりましたがご家族に納得いただける整理、清掃が出来ました。

貴重な経験値をいただきありがとうございました。

一般社団法人 自転車技術者協会

代表理事 中根和宏